もし、明日の朝には死んでしまっているとしたら、今晩のごはんは、最後の晩餐になります。
その可能性は、どんなに元気な人でも、若い人でも、ゼロではありません。

私は、毎日、今日が最後の日だと思って生きています。
ですから、毎日の夕食が最後の晩餐です。
6時半になると晩酌タイムに入ります。

最初のビールを一気に飲み干すと背筋がピンと伸びます。
次いで琥珀色の液体がトクトクと心地のいい音を立ててロックグラスに注がれると臍下丹田にある種の覚悟が宿ります。
あと5時間半しっかり生きようという覚悟です。

飲むほど酔うほどに、この覚悟が大いなる喜びに変わってくるのです。
お酒もテーブルの料理も、全て輝いて見えてきます。
ひと口ひと口を大切にします。
美味しくてたまりません。
感謝の気持ちが湧き上がってきます。

これが、私にとって最高の食養生です。

私は、仕事柄、死を目前にした人と接することが多くあります。
みなさん、死の不安でいっぱいです。
そんな不安をどうやって癒すことができるか。

畏友青木新門さんは著書の中で、死の不安におののく末期の患者さんに安心を与えるのは、その患者さんより死に近いところに立つことだと書いています。

私も医療者として、死に向かう患者さんよりも、ほんの一歩でも死に近いところに立ってあげたいと思っています。
暗い夜道で前に誰もいないと不安ですが、だれかがいてくれると、安心できるものです。

そのために私は、今日が最後の日だと思って生きようと決めました。
知らない世界へ旅立っていく患者さんの道しるべになればと思いました。
そのおかげで、毎日の夕食が、最後の晩餐という、かけがえのないものになりました。