粋な生き方というのは「アカ抜けしていて」「はりがあって」「色っぽい」ことだと、哲学者の九鬼周造は、著書『「いき」の構造』(岩波文庫、講談社学術文庫)で書いています。

アカ抜けしてというのは、諦観。
諦めることです。
何事も貪欲に最後まで追求しないで、あるところで満ち足りて諦めるということです。

80歳になって、40代50代の体力を求めるのは、果たしてどうでしょうか。
50歳には50歳の、80歳には80歳の健康があるはずです。
少々おしっこの出が悪くなっても、耳が遠くなっても、目が見えにくくなっても、それはそれで良しとする。
現在の状況を受け入れて、その範囲で楽しく毎日を過ごせる工夫をすればいいのです。

恋をすれば、最後まで行きたくなるのはやまやまですが、あるところでブレーキをかけることも必要です。
アクセルをふかしてばかりだと、思わぬトラブルに巻き込まれたりします。

最後まで行かないのも、心の中に渦が巻いて、それは一種のときめきです。
その状況を、楽しめばいいのです。

がんになったら最初は諦めずに一生懸命に治療に取り組みます。
でも、あるところまで行ったら、今度は、死後の世界を楽しみにすることです。
気持ちを切り替えます。
そのことで、かえって、自然治癒力が高まるものです。

心理療法で有名なカール・サイモントン博士が、私の病院で講演をしてくださったとき、「諦めない気持ちと、いつでも死ねるという覚悟」が、がんと付き合うときには大切だという話をしてくれました。
その通りだと思います。
「諦観」という言葉、頭の片隅に入れておいてください。